2014年11月15日土曜日

TULALA Glissando 77



よもや分かるまいと思っていた。それだけに、彼女の一言には衝撃をうけた。


仮にも十数年、限られた数とはいえ毎年のように釣りを嗜んできた。

淡水、海水、餌、ルアーに限らず、僕のその時の旬であるターゲットを目当てに振り回されてきたはずだ。

彼女の特徴は、釣りをする時間はおよそ5分程度。その後は心地よい潮風をあびながら、さんさんと降り注ぐ太陽光に眩しい表情をみせながら、本人の大好きな読書に興じたり、お菓子を食べたり、あるいは両方を一度に楽しんでいる。

そして僕の言葉で再び竿を手にする。

風向きの変化、日差しの強弱、お菓子の有無、様々ある自然、その変化のつど、彼女に声を掛ける。

およそ5分程度、竿を振る。彼女の時間がきたら、きっちり竿を置く。

今度は寝そべって読書を始めたかと思うと、ついにはそのまま眠りにつく。

そしてまた、僕の言葉で目を覚まし、竿を手にする。

相も変わらず太陽には眩しい表情をみせている。

しかし、この5分の間にかなりの確率で魚に相手をしてもらえるのだから、始末が悪い。

時間が経過せずとも、彼女は一匹釣れたら必ず竿を置く。もう満足。そう言わんばかりに。

こちらからしたら良いのか悪いのか分からなくなってくる。

あれも釣ってほしい。これで釣らせてあげたい。これなら喜ぶはずだ。と、準備段階での欲求、まさしくルンルン気分が淘汰されている気になるからだ。

釣りを始めて十数年とはいえ、年に数回、毎回このような塩梅なので、成長などの言葉とは程遠い。(後にこれが間違いだと気づく。)

未だにノットは組めない、餌はつけない、ルアーも選ばない。

いわゆる初心者、渡されたタックルを手に持ち、指定された場所に投げるだけ。

ロングリーダー(長い仕掛け)以外のキャストは上手くなったもんである。

釣りを始めて、という言葉もおかしいかもしれない。彼女にとってはあくまでも「ついていってる」という思考なのだろう。ならば釣りを「知って」のほうが正しいかもしれない。

だからこそ、彼女との釣行前夜の準備は未だにルンルン気分が維持できている。

僕の釣りの基本は、誰かに釣ってもらうことへの喜びが大きい。

それを理解している上で、そのピュアさを保ってくれているのかもしれない。


釣りと出会って十数年の彼女がはなった一言に衝撃をうける。


よもや分かるまい。そう思い握らせたグリッサンド77。

これまでも数ある名竿と呼ばれるロッドを握らせてきたつもりである。

ハートランド、フェンウィック、インスパイア、テムジン…etc(餌釣り含まない)

いずれも6㌳代のロッドたち。小柄な女性にはちょうど良いレングスだろう。

僕は基本的に岸がメインなため、本来は長いロッドが好みだ。震斬にはじまる長尺は僕専用機である。

しかし、グリッサンド73を手に入れ、興味本位で振らせてみたところ、綺麗に振れているではないか。

未体験の7㌳代を、それも今までより強い(固い)ロッドに関わらず、1投目からしっかり振り抜けている。

思わぬ、いつのまにかの成長である。毎釣行、打つ数は少なくとも、彼女なりに何かを見続けてきたのだろう。

それならば7㌳7㌅も大丈夫だろうと握らせてみたわけである。

というよりも、彼女専用機としてどうだろうとの思惑であった。

横にいるそれには本物を持たせたい、男の性なのであろう。僕の場合はブランドモノのバッグより、釣り具のソレが当てはまる。





「何、これ?」





ロッドを手に、彼女が発した第一声目である。



僕「もしかして分かるの?何か感じる?」


お嬢「…何も感じない…んだけど。」


僕「そだよね。何も感じないってのは重さを感じないってこと?」


お嬢「うん。なんにも持ってないような、変な感じ…。」


僕「凄いね!分かるんだね!」


お嬢「???」



あまりにも嬉しすぎて一人で喜ぶ僕を、訳も分からず見つめるお嬢。

そう。僕もこんなバランスのロッドに初めて出会いました。

つまりは僕は知識としてバランスというモノを知っていたけど、彼女には当然知り得ない知識、「感覚」だったのである。

重要なことと言うより、注目してほしいのはバット部の太さに対しての持ち重り感。圧倒的に人気のあるセパレートではないグリップもバランスを追求した結果なのでしょう。

まぁ先ずこのバット径でここまでのバランスは他には存在しません。

*(全世界のロッドを握ったことのない僕の戯言ですので、一個人の感想としてお聞き下さいw)

振り抜く最中の気持ち良さ、アクションをつける軽快さ、感度も申し分なし。

贅沢な話ですが、釣りを初めて間もない人にこそ持ってもらいたいバランス。きっと良い意味でのクセが変わってきます。

ただし、ツララ史上最もライトとメーカーさんにはありますが(2014年11月現在)、バス用のライトを想像している方はお気をつけ下さいませ。

そこまでライトではなく、琵琶湖岸釣りならネイルシンカー1/16以下を多用されると思いますが、それに4㌅程度のネコリグ等では手に操る感度が届いてきません。

それだけティップがシャキッといていて、ある程度の負荷がないと操る楽しさが低減します。

イメージは秋の湖北で浜からPE0.6+フロロ12lbに9g〜のスティックベイトをスキッピングで巻いてくる釣り。

要するに速いトゥィッチで水面下、上を滑らせたい。

ソルトでは28gのメタルジグは問題なくフルキャストでき、キャパを知るために60gもキャストしましたが、これはちょっと竿が可哀想でした。

というより、本来は40gぐらいからラインシステムを変えなければいけないので、ナンデモロッドとはいえこの辺りの調整はアングラー次第かと。それによって使い心地が変わってくるはずです。

ジグを扱うにはレングスが短く、縦のシャクリより横のシャクリの方が気持ちがよろしいかと。となれば、10g〜のプラグは言うに及ばず。

今夏にシオ(カンパチの子)を三本ほど獲りましたが、ちょうど程よい好敵手でした。

ちなみにリールはSHIMANOさんのレアニウムcl4+C3000HGを装着して持ってもらいました。驚異的な軽さを誇るリール(190g)ですが、この子には少し軽すぎます。

僕はハンドルキャップと諸々にタングステンを入れ、205gにしています。もう少し重さがあってもいいような感じなので、使い手にもよるでしょうが210〜220gぐらいが理想かと。注意点としましては、ハンドルグリップ部にも重りを挿入できますが、こちらは相当変わったバランスになりますので、ご注意を。



「今までの竿の中で一番好き♡」



とは彼女のお言葉。


「Ford Every Stream」


どうやら最高の一本に出会えたようです。

やれやれ、次はいつ釣りに行けることやら。












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