2015年1月14日水曜日

着付免状



あだちで教えさせて頂いている着付けは前結びと呼ばれる着付け方法。

読んで字の如く、従来の後ろで結ぶ帯結びとは違い、帯を前で結ぶという動作が大きく異なる部分である。

二重太鼓は勿論のこと、振袖で結ぶ変わり結びも得意分野に入ってくる。

前結びの素晴らしいところは、自分で振袖を着れるところにもある。


振袖〜前結び動画〜


着物というジャンルの中では難易度が最も高い部類だが、目標を高く設定することによって自ずと歩む道も険しくなってくる。

普通に考えればしんどいことだが、人それぞれの道中なので、ふと立ち止まり振り向けば、そこには案外安易な世界が広がっているはずだ。

それほど高い目標とは、自分を見知らぬうちに急成長させてくれる夢のようなツールだと思う。

かく言う僕も、自分の着付け(男性着付け)からは入らずに、今となっては笑い話しだが女性の他装(人に着せること)から身につけた。


「結納という場で母と姉に着物を着せ付ける。帯も僕が二重太鼓を結ぶ。」


結婚する前にそんなテーマを自分に課してみた。

呉服屋に入る以上、必要な知識は山のようにある。技術も然り。

ならば、こんなに着物の仕組みが理解できる機会もそうないだろうとにらんだ訳である。

そしてそれが出来ぬなら、僕には呉服屋に入る資格がないのだとも考えていた。

先生はお嬢。五日間ほど、それぞれ一時間程度教えてもらったと記憶しているのだが、この記憶が曖昧な上、今思えば首を傾げてしまう。

なぜならば、女性の他装とはそんな甘っちょろいものではなく、しっかりと着物を理解した上で、それ相応の技術によって成り立つものである。

自身が着物を着た経験も一度もなく、ましてや着物に触れたこともなく、なにより畳むことすら出来なかった。

しかし当日の朝、緊張しながらも二人を着せ付けたのは紛れもない事実であり、結納の場に入れば歓声が上がり、女将とお嬢にはお褒めの言葉を頂戴した。

今となって思えば、全ては頭の中に着姿のイメージがあっただけだと思う。

そうでなければたとえ一週間練習していても、とびとびの一時間程度のそれでは出来やしない。

必死ではあった。中身はきっと窮屈で、外見だけは綺麗に整っていた感が今にしてある。





呉服屋に入る前に女性の他装とは、ハードルを上げすぎたなw




しかし前述の通り急成長であり、その後の自分の着付けなど苦とも思ったことはない。

どこで振り向くタイミングをつくるかは、とどのつまり自分のペースである。





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2015年に入り、早速嬉しいことがありました。

遠い地よりあだちを選んで下さり、お嬢に惚れて下さり、着付け教室に通って下さっている方が一人いらっしゃいます。

都合の合う日に、朝から晩まで着付けを学び、そして一泊する。

翌日は帰りの電車の時間までまた学ぶ。

何年経つだろうか。

僕は頭が下がる思いで見てきました。


「この人の目標はどこにあるんだろう」


ふと、そんなことが脳裏をよぎる。

聞けばすぐに答えてくれるだろう。

しかし、その問いが、もしこの人の振り向くタイミングになる可能性があるならば、それは決して問うてはいけないことである。

この疑問は、ぐっと僕の胸にしまっておこう。

これからも自分のペースで歩んで下さい。



〜早比楽美装きもの学院 講師〜


お免状取得、おめでとう御座います。








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